賃貸住宅の原状回復「賃貸人にどこまで負担させるのか?」

弁護士紹介
高砂 健太郎  Takasago Kentaro
【得意分野】
不動産関連 相続関連
【所属弁護士会】
大阪弁護士会
不動産・企業案件の取り扱いが多く,この分野の経験豊富なことが私の強みです。 弁護士が扱う分野の中でも,法律・裁判例などの知識に加えて,特に「交渉力」や「実行力」を問われるのが不動産問題です。 相談者の話を「よく聞く」ことを大切にして,トラブルを未然に防ぎ,納得のいく解決に導きたいと思っています。
賃貸住宅の原状回復「賃貸人にどこまで負担させるのか?」
【2つのガイドライン】

 「賃借人にどこまで原状回復させることができるのか?」
 そんな相談を大家さんや管理会社からよく受けます。これに対して原状回復トラブル防止策を定めたガイドラインがあることをご存知でしょうか。国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」と、『東京ルール』と呼ばれる東京都賃貸住宅紛争防止条例が代表的です。徐々に浸透してきたと言われますが、実際はどうでしょうか。

【補修費用、どこまで負担?】

 ガイドラインに従えば次の①~③のうち、大家さんが負担しなければいけない補修費用はどれか、おわかりになりますか?
①クロスの日焼け・日照によ る床の変色などの自然損耗
②画鋲・ピン等の穴、冷蔵庫によるクロスの黒ずみ等の通常損耗(通常使用していれば発生する損耗)
③風呂・トイレの水垢、カビ、結露放置によるシミ

③は賃借人が適正に管理していれば発生しないものです。これに対して①②は、賃借人が適正に管理しても発生するものなので、賃貸人が得る賃料に含まれていると考えます。
つまり①自然損耗②通常損耗に対する補修費は、大家さんの負担ということになります。

【特約がカギに】

では、これらを賃借人に負担させることは絶対に不可能なのでしょうか。実は、②通常損耗に関する修繕費用を賃借人が負担する旨の特約が有効か問題になった裁判例があります(最高裁平成17年12月16日)。
この裁判例では、「建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書で明らかでない場合は、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意していること」が必要と言っています。
賃借人が本来負担しなくてもよい②通常損耗補修費を敢えて負担すると明確にわかるようになっていなければダメということです。裏を返せば、情報提供をしっかりして、負担になることを覚悟させたうえで特約を結ぶのであれば、有効になる余地もあるということです。賃借人がその負担を覚悟するということは、例えば賃料を低額にする等メリットを与えることも必要なのかもしれません。